会長のコラム 147
新年、明けましておめでとう御座います。時期外れのご挨拶ですが、今年も昨年以上に良い内容に進展させますので宜しくご支援頂きたくお願い申し上げます。
1月は、昨年末の反動か、コンサートラッシュでありました。神奈川フィルのコンサートが2演目、新国立劇場の定期公演が2演目と多く、加えて新年会や賀詞交換会などの会合が有って、以前ですと何か「新年だぞ!」と新たな思いが湧いたのでしたが、この歳になると浮世の義理感が先行するから、年寄は嫌になります。
業界の賀詞交換会などで、感じるのですが同業者同志「新年おめでとう」の言葉の陰に蠢く殺気など、良く見えるようになるのが歳の所為であますが、自分も「昔はそうだった」などと感じつつも、絵空事と見通すと、「シラケ」てしまい抗する事も面倒と言う事になります。
昨年暮れの新商品CA-1000は、オーディオ各誌から絶賛の評価を頂きました。半導体商品が主力を占めるなか、真空管による拘りの商品は、「嘗て体験したことの無い佇まい」と聴く者に感動を与えることが賞賛の対象となって居ます。手前味噌で恐縮ですが、このプリアンプCA-1000と一昨年発売したメインアンプのMA-1000に接続し、名器と言われるスピーカーに接続すると、嘗て、体験したことの無い異次元の音を実感して頂けます。半導体式のハイパワーアンプでないと駆動出来ないと言われていた低能率のスピーカーが、ものの見事に変身し、その威力は優れモノの誉れであります。特に、バイ・アンプ接続にすると、その特徴は更に強調きれ、僅か総力20Wのアンプとは思えない実感が味わえます。
良く言われる事で「スピーカーは、ハイ・パワーアンプによる強力なダンピング・ファクターが必要」などと言われていましたが、その理屈を覆す現象を是非体験してみて下さい。
毎年、1月には音楽評論家の加藤浩子さんが、「バッハの旅同窓会」と称した新年会を主催されます。今年も1月11日日曜にオペラ・シティーの東天紅にて行われ行ってきました。昨年は、ゲストにバッハカンタータ全集をCD化した指揮者の鈴木雅明氏をゲストに呼んでのレクチャーでしたが、今年は我が国におけるバッハ研究者の第一人者であられる、樋口隆一氏をゲストに呼んでのレクチャーでした。氏は音楽学者で大学教授を務める傍ら、指揮者であり、多くの書籍を上梓されておられ、大変面白いお話を聞かせてもらいました。
さて、1月の音楽ライフです。
1月17日土曜 PM2.00 開演でミューザ川崎にて神奈川フィル特別演奏会「オーケストラ名曲への招待」と題するコンサートに行ってきました。
このコンサートホールは、地震による崩壊を受けて、殆どリニューアルして再開場されました。リニューアル以後、ここを訪れるのは初めてでした。と言うことで、音響がどう改善されたのか興味がありました。私は、以前よりこのホールは好きでなく、今までは積極的に行きたくないコンサートホールでしたが、改善されたとの評判でしたから、楽しみに訪れた次第です。
確かに以前より聴き良くなったと思います。オーケストラを中心に観客席を周りにと言う構造は変わっておらず、オーケストラの直接音が視聴者に届く構造です、その為ホールの反響が薄くなるように感じます。今までのコンサートホールの概念とは違う思想で、ベルリンフィル・コンサートホールと同じ思想と思うのですが、私は未だベルリンには行った事が無いので述べる資格はありませんが、ここミューザの音は、やはり、私には馴染めないものでした。
加えて、コンサートホールの佇まいはもう少し何とかならないものかと思います。ザルツブルグと姉妹都市と言うことで、川崎市がこのホールを種に文化度の高さを強調する姿勢は少し「シラケ」を感じてしまいます。それは、ホワイエの空間感が狭い、玄関ロビーに気品が無いのです。音響は、馴染んでくるかもしれませんが、佇まいはどうにもならないでしょう。
当日の演奏曲目は、ワーグナー/舞台神聖祝典劇「パルジファル」前奏曲、コルンゴルド/チェロ協奏曲、ベートーベン/交響曲第3番、でした。
最初に演奏された「パルジファル」の序曲は、最近私が「はまっている」曲でして、大いに関心のあった曲でした。聞きなれた曲だけに、演奏の出来の悪さが目立ち、指揮者のサッシャ・ゲッツェルさんの得意なレパートリーの筈、来日初日の演奏と言うから、時差のお疲れだったのかも。しかし、首席チェロ奏者の山本裕康のソロ演奏は別格に良い演奏だった事を申し添えます。
その1週間遅れで、みなとみらいホールにて神奈川フィル定期演奏会でしたが、こちらの方は素晴らしい出来ばえでした。
1月18日 日曜PM 2.00開演で新国立劇場にて、ワーグナー/オペラ「さまよえるオランダ人」を観劇して来ました。
前日のミューザ川崎に続き2日連続のマチネ公演で、この週の土日は、自宅でのオーディオ・ライフは完全にお休みとしました。指揮が飯森泰次朗 オケが東京交響楽団。主役クラスの4人の内ドイツ人が3人、ダーラント役のラファウ・シヴェクがポーランド人であるものの、全て地元でのワーグナー歌いとして定評のある人達。しかも、エリック役のダニエル・キルヒ以外は国立劇場にて既におなじみの人でありました。これは、指揮者、音楽監督の飯森の推薦によるものと思います。加えて、実にシンプルで解りやすい演出、これには特に好感が持てて、熱の入った演奏に後まで感激の尾を引かされました。毎度の事ながら、流石新国立劇場万歳といわざるを得ません。
1月24日土曜 PM 2.00開演でみなとみらいホールにて、神奈川フィル定期演奏会に行ってきました。演奏曲目が、コルンゴルド/組曲「シュトラウシアーナ」、R・シュトラウス/4つの最後の歌、ブルックナー/交響曲9番、そして指揮がサッシャ・ゲッツェルでした。
1週間前のミューザ川崎とは別オーケストラと思わされる程の素晴らしい演奏で、特にR・
シュトラウスの「4つの最後の歌」は素晴らしかった。私この曲のCDで「アンナ・ネトレプコ」のものを持っていますが、当日のソプラノ歌手「チーデム・ソヤルスラン」はそれを上回るものと察しました。加えて、ソロ・コンマスの石田さんのソロ演奏が素晴らしく、生音とCD音の差はあるものの、ネトレプコ盤CDを聞く気にならなくなりました。
後ステージのブルックナー9番は、作曲者が自分の死を意識しつつ作曲したと言われるように、一種の凄みを感じるものでありまして、生粋のウイーン人、そのウイーン流の先端を行く若き指揮者の有り様を感じるものでありました。暫くぶりのみなとみらいホールでの神奈川フィルの演奏、その興奮醒めやらず内に、馴染みの寿司屋で、その自慢話に愛妻と悦に入るものでありました。
1月29日木曜 PM7.00開演で、新国立劇場にてヨハン・シュトラウスⅡ/「こうもり」を観劇してきました。
このオペラ、新年には欠かせない演目でありますが、新国立劇場の公演は久しぶりでした。
指揮がアルフレード・エシュヴェ、演奏が東京交響楽団でした。指揮者のアルフレードさんは、ウイーン、ドイツ、ヨーロッパを中心に活躍していますが、新国立劇場には「魔笛」以来の2度目の出演となります。何時ものように主役クラスは外国人で、6名が出演しオーストリア、ドイツ、の他にドイツで活躍しているアメリカ人などで、ウイーンの雰囲気を演出するのに最適な構成でありました。やはり、ワルツ、ポルカの乗りは日本人には出せませんね、出せたとしても楽しくありません。
このオペラは、何度見ても楽しく面白いのです。当日も午後19.00開演で終演が22.00、カーテンコールが終わって駐車場を出たのが、22.30でした。木曜でしたがほぼ満席、観客は流石にビジネスマンらしき方は少なく、初老人と言うところでしょうか、会場は気品にあふれ大人の世界です。これが、オペラ「こうもり」の雰囲気でしょうか、過酷な時間帯に関わらず、皆さん幸せな顔つき、この雰囲気実にいいですね。そして、横浜のサンシティーに着いたのが、23.05でした、30分+αですが、飛ばして運転などしていません、念のため言っておきます。
それから、ワインを飲みつつ寝たのが午前0.30で、翌30日朝は起きたら雪景色です。何やらオペラ「こうもり」を地で行く感じは、貴重な体験でありました。
豪華なオペラの雰囲気をお裾分けします、プログラムの写真ですが、お察し出来ますでしょうか。