Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 192

8月のコラム 192号です
コラム191から続くチャンネル・アンプシステムの話を続けます。私の薦めるシステムに限ったことではありませんが、チャンネル・アンプシステムの導入に当たり、一般論を含めて注意すべき問題をお話しします。
本システムでは、LとRで6台のアンプが必要となります。よく言われる事ですが、手持ちのアンプを低音用、高音用などと異機種のものを用いたいとの要望を聞きますが、それは、チャンネル・アンプ方式の利点を削ぎます、特に私のお勧めするシステムではその弊害が顕著に表れます。
従来型チャンデバは、私が度々指摘していますが、オペアンプを使用した理想形のフィルターを形成するもの、高次フィルターの作り易いデジタル式のものが大半でした。これらは、全帯域に渡っての位相特性をリニアーにすることが出来ません。特にデジタル式はD/A A/Dを繰り返すので、音楽信号の鮮度を落とすことにもなるので、論外といわざるを得ません。チャンデバによる鮮度を阻害する要素を撤去すると、今までに無かった信号系の欠陥現象が顕著に現れるのは自然の理と言うものでしょう。
我々が提案するパッシブ型の6dB/oct フィルターは、位相リニアーであり、音楽信号の鮮度に対し、極めて高い鮮度を保ちますから、6台のアンプの全てに同じアンプを使って頂くことを勧めるのです。
メイン・アンプは、真空管式であれ、半導体式で有れ、使用回路によって位相の変移が生じます。同じ回路のアンプであっても使用部品の違いからも位相特性は微妙に変わります。この微妙な位相変移が音場定位に影響してステレオ感を削ぎます。何度も言いますが、人間のステレオ感は、位相差から感じ取るのです。チャンデバが、位相特性を損ねたのでは本末転倒と言うもの。私の知る限り過去に良いチャンデバの商品は有りませんでした。
6dB/octフィルターのチャンデバは、チャンネル間の帯域がルーズで、ユニット毎の音が混ざると言って嫌う傾向があります。しかしそれは思い過ごしであります。帯域毎に、L R、毎に、ユニットそれぞれの位相が合っていれば違和感どころか、異質のものが混ざりあって良い結果を生みます。
ウイーンフィルのコンサートマスターであられたキュッヘルさんとお酒を飲んでいるとき、私、氏に馬鹿げた質問と思いつつも、第一ヴァイオリン全てをストラディバリウスにすると凄い音になるのではないか?と。キュッヘルさん即座に、それはつまらない音になりますと言い切っていました。
当社のチャンデバは、パッシブであります。シンプルイズベストが当社の機器作りの信条です、と言うことで、当社のチャンデバには増幅器は使用していません。よくあるアマチュア向けの製作記事などでもこの型のチャンデバを勧めていますが、チャンネル毎の音量調節にVRやATTを使用する以外にレベル調整の術は有りません。この音量調整器が、音質劣化の問題である事は、チャンデバに限らず一般常識で有ります。本商品には当社の特許であるハイブリッドATT を全てのチャンネルに使用し、この徹底ぶりにより過去に無い音質とステージ感を実現します。試作品のモニターをお願いしている専門家の方からも絶賛を頂いています。
低域、中域、高域それぞれのユニット間には、設置位置による時間差が生じます。その時間差を調整する機能は本器には有りませんので、ユニットの設置位置の調整によることになります。従って、大型のホーン使用の場合、ユニット位置の調整は試聴室の広さを必要とするので、この点デジタル式では容易に可能でありますが、「1m以上は補正出来ない」と明言しているものも有りますから要注意です。と言うことで、私も手もちのWE-22Aホーンの使用は諦めています。
時間差の問題について、こんなこともありました。オーディオ研究家の故 池田 圭 氏はWE-15A を常用して居られ、氏の作る再生音が素晴らしいのは有名でした。特に低音の再生には他人に真似の出来ない技が有りました。しかし私の言う、音場定位には程遠いもので、これは、「正しいか、正しくないか」、それは聴く人の「再生音と音楽」に対する哲学です。他人が言うことでは有り得ません。  
当社のチャンデバでは、コンサート・ホールの低音、あの風のような低音を再現するために、3.1チャンネル構成としました。20Hz カットオフの出力端子をスーパー・ウーファー用として備えました。拙宅では極めて効果的に動作していますが、これはジャズファンの方には異論がありそうです。そして、本器には、当然ながら音場特性の補正機能も備えています。
以上で、3回続けたチャンネル・アンプ方式を終わりますが、本コラムにて省略した、数式を用いての解説は、何かの機会に(取説も考えられる)させて頂く予定でおります。

さて今月の音楽ライフです
8月は、神奈川フィルの定期も新国立劇場の定期もお休みです。以下の二つの特徴あるコンサートに行きましたのでレポートします。
8月3日 金曜 神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏による、サン=サーンス/V協3
番、そして交響曲3番「オルガン付き」のコンサートが、ミューザ川崎シンフォニーホールにて開催され、19時開演で行ってきました。
当日のV協3番のソリストは神尾真由子、指揮が川瀬賢太郎、コンサートマスターが石田泰尚で、定期演奏会では取り上げそうもない、興味ある演目でした。
V協ソリストの神尾真由子は、2007年のチャイコフスキー国際コンクールに優勝し、大きな話題となった人で、帰国後にNHK に出演しチャイコフスキーのV協を演奏した放送を聞いたとき、若いのに凄いと注目したものです。その後、神奈川フィルの定期にも出演し生を聞いていますが、何とも若いのにこの大人びた演奏が魅力で、注目したものでした。
その後国際的に活躍するようになり、暫くして、このチャイコフスキーV協がCDでリリースされ、早速購入しましたが、これと言った欠陥がある訳では無いのに、何か面白く無い、あの初々しさは何処へ行ったのか、演奏会慣れなのか、スリリングに欠けた演奏も彼女に興味を抱く何かを感じ、「もやもや」が残っています。
今回のコンサートは、サン=サーンスのV協3番です。ここミューザ川崎ホールでの当日の席が3Fで、S席なのですがV協演奏を聴くには、ビブラートの音を聞き分けられず不満が残るものでした。
ミューザ川崎ホールでの観賞歴では、2F前列が一番良いと感じています。当日のコンサートは、3F左席しか買えませんでした。と言う事で、神尾のストラディバリウスもいまいちの音には残念でした。
私、神奈川フィルには、定期演奏会のプログラムのソノリテのページ定位置に広告を掲載しています。その関係で、営業担当者には多少の我儘を言うのですが、当日の公演はミューザ川崎ホールの企画で、神奈川フィルの演奏にも関わらず何のお役に立てないと恐縮された結果であり、生演奏もホール環境、座席位置は大切な要素であることが改めて勉強になりました。
交響曲3番「オルガン付き」ですが、ここのオルガンは低音をあまり感じません。オルガンのパイプは上を向いていますから、上の席が良い筈、当日の席は上の方ですから、なにが原因か分りません。
ここミューザ川崎は、高速道路へのアクセスが悪く、何時も電車で行くのですが、横浜からは1駅で便利なのです。しかし、ウィーク・デイの夜は、往複路とも電車が混んで老人には酷であり、この間のグリーン車でも立つことになります。私、失礼ながら、川崎と聞くだけで、昔の重工業地帯の大気汚染のイメージしか湧かない昔人間です。
しかし、驚きました。コンサート後の食事にイタリア・レストランは無いかと探しました。私の知る重工業の町とは別の姿に変身した街並みは凄い、モダンでフランス調、これ横浜以上ですね、家族連れの町 横浜とは次元が違う、良いレストランもある筈と歩いてみて、見つけましたよ。
店には、イタリア人のシェフとスタッフが居て、料理もワインもイタリア的で値段もリーズナブル、フィレンツェのティーボーン・ステーキが有りました。もっとも国産牛ですが。当日の成果は、これを以てチャラと言う事に成りますが、このレストランは再度に訪ねる価値大であり、大きな成果でありました。

8月14、15 の両日、帝国ホテルのジャズ・フェスティバルに行ってきました。昨年は1日だけ行ったのですが、ことしは15周年と言う事で、2日に渡ったプログラムの全てに参加してきました。
この企画は、奥田宗弘が率いていた ザ・ブルースカイ・オーケストラ を息子の奥田英人が引き継いでリーダーを務める、今では貴重なフル・オーケストラが中心となっております。しかも出演者が凄い、ピアノ奏者に前田憲男、秋満義孝、山下洋輔、高木里代子、トランペットの日野皓正、国民栄誉賞のサックス奏者五十嵐明要、ベースの荒川康男、若手で17才の天才的サックス奏者の石井陽太、若手バイブ奏者の宅間善之などまだまだ書ききれない。そしてコンボの外山喜雄・デキシーセインツ、演奏曲は当然の事ながら全てスイング、デキシイー に徹している。
歌手には、八代亜紀、ジュディ・オング、Chage, 佐々木秀実、そしてアメリカで活躍するトヨタ・チカ、他にもまだまだ書ききれません。八代亜紀は、演歌歌手のレッテルが大きく、本人もそれが気になると見えて、舞台に出るなり、いきなりフル・バンドをバックに「YOUD BE SO NICE TO COME HOME TO 」を歌うので吃驚、演歌歌手と言われたくない心境がよめて面白い、出来具合は感動を覚えるほどではありませんが、客寄せパンダの役は充分果たしていました。
会場は、1000人弱収容の天井高い平土間型のホールをメイン会場としており、当然PA ですが良く出来ており流石と言うもの。コンサートは、メイン会場としてこのホール、コンボ演奏用の50名程度の小部屋が4部屋あり時間差を付けてそれぞれに演奏されます。
コンボ演奏では、pf :秋満義孝、Vib :宅間善之、アルトサックス :五十嵐明要、石井陽太、
ベース:荒川康男、ドラム:小山太郎のコンボ演奏は実に見事、国民栄誉賞の五十嵐のアルト、17歳の天才的アルト奏者の石井陽太、この構成はここでなければ出来ないでしょう。そして、バイブの宅間は昨年この会場で初めて聴いて、すっかり惚れ込んでしまい、若いのにライオネル・ハンプトン風の奏法は、故 杉浦良三の風もあり、スイング・ジャズの王道を歩んでいて、今後が楽しみです。
 夏季休暇中の2日間は、大いに充実しました。何と言っても、今では貴重な フル・バンドの生演奏です、出来たら来年も来たいものです。
 追記、私、固く焼いた焼きたてのバケットが好きで、レストランのこれが極めて旨かったので、油断して歯を欠いてしまい、大変な目に合ったと言うおまけが付いた休暇でもありました。

8月25日土曜 14:00 開演で、みなとみらいホールにて、清水和音のピアノと神奈川フィルの演奏によるラフマニノフのP協演奏会に行ってきました。
前ステージが、P 協2番、後ステージがP 協3番でした。そして、指揮者は太田 弦、この人は、東京芸大首席で卒業後2015東京国際コンクールにて入賞の経歴、大変若い指揮者でありました。
清水和音は20歳で 1982年 ロン・ティボー 国際コンクール・ピアノ部門で優勝すると言う、天才肌のピアニストで、国際的に活躍している人です。ラフマニノフのP 協2番は、映画音楽にも使われ、音楽鑑賞を趣味とする人の入門バージョンとして有名であり、ロマンチックなメロディーが特徴。前ステージが、このP 協2番でした。LP、CD で聞く機会が多いためか、何か締まらない演奏との思いがはしります。しかし、後ステージのP協3番を聞くにおよんで、その理由が理解できたように思ったのです。
ラフマニノフのP協3番は、折り紙付きの難曲で、初演当時は作曲者のラフマニノフしか弾けなかったと言われています。後年同じロシア人のホロビッツが得意曲として、弾くようになり多くのピアニストが弾くようになったと言われ、初演当時マーラーの指揮でニューヨークフィルが演奏したしたときには、練習中に楽団員から難し過ぎるためにシラケムードであったのを、マーラーがこれは名曲だからもっと一生懸命に掛かれと激を飛ばしたというようなことも話に聞きます。
さて当日の演奏です、前ステージの2番とは別人とも思える緊張した演奏に驚きであり、この曲の難しさ故か聞く者も疲れを感じてしまうほどに緊張しました。清水和音と言う奏者も素晴らしい、バックを付ける神奈川フィルも相当に練習し、素晴らしい演奏に仕上げたものと思います。なるほど、P 協2番の演奏は、それが故かと思うほどでありました。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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