会長のコラム 282
前号コラム281 にて記した拙宅書斎での転倒跡もどうやら全快しつつあるが、日常の行動で、転倒が怖いから、仕事のモーションが極めて遅くなり、常日頃のペースに程遠い状況に至る。これまたイライラの元となり、不愉快な生活を送ることになる。そもそも米寿を過ぎて現役というのが、諸悪の元である事、本人承知でいるから始末が悪い。
老齢者の死因で、最も多いのが誤嚥とのことであるが、死因に誤嚥と言う言語は無く、全て老衰と死亡証明に記される。この辺りの事情も私自身の高齢化により、読めて来たように思うのである。
この「脳の働き」何とも気になる。昨今の老化現象で困ることは、身近な知人の名前、地名などの固有名詞が、瞬時に出なくなり、「ナニだの、アレだの」と老人語が多くなる。だから、業務の重要事項には関与しない様に注意しているが、永年の経験から有るべき行動なり、「かくあらねばならぬ」と理屈抜きの正解(有るべき姿、言葉)を持っているから、この点が何とも言えない、只、ストレスとして残るのだ。
今の私の身分は「非常勤取締役 会長」である。ここを理解しないと「身の危険に会うぞ」と自身に言い聞かせているのだが、何分にも、今年の9月には90歳となる身だ。
老齢者の死亡原因の多くが「誤嚥」、それが「老衰」と記される公式記録(死亡証明書)である事、自分がその渦中に居ると思うと、何ともヤリキレナイ心境に陥る。この「脳」の働きの「鈍さ」と、自身の過去から培った常識とが、バッティングして益々脳の働きに変調をきたす。何はともあれ、今年は90歳である。創業者の勲章として「非常勤取締役 会長」この辺りの職責が身に付いて居ないから、イライラのストレスが溜まる。
私の知るオーディオ誌の創業者会長は、私より一つ歳上、だが、既に引退モード、頼り甲斐のある息子が居て私とは大違い。私はと言えば、創業者としての思いが邪魔して、何とも情けない心境に至って居るのだ。
今月の音楽ライフ
3月10日 14時開演で、モーツァルト/ドン・ジョバンニに、常々世話になって居る広報の西松顧問と、新国立劇場へ行ってきました。
ご承知の様にモーツァルトはドイツ語圏のオーストリア人です、そのオーストリア人がイタリア人と並び素晴らしいイタリア・オペラを作曲したのです。我々が純イタリア・オペラの作曲家ヴェルディの作品とモーツァルトの作品に言葉の違いや雰囲気の違いから、国の差を聞き分けることは出来ません。その点ドイツの作曲家は別で、いかにも「ドイツとイタリアは別だ」と言わんばかりに、我々がそれぞれの曲を聴いてもその差は明確です。
この点を鑑みると、オーストリアの殿様は「イタリア語は上品でドイツ語は下品だ」と言って、モーツァルトには「イタリアに行ってイタリア語のオペラを作れ」と命じたとの逸話がありますが、確かに、イタリア・オペラとドイツ・オペラの違いは明確です。
モーツァルトのドイツ訛のイタリア語、聴いてみたかった。この「ドン・ジョバンニ」は今ではオペラの中のオペラとして人気絶頂であること、余計な事考える必要は無いと思うが、当時の事情も知りたくなる。要はオペラ芸術は、素晴らしいの一言。